「お疲れ様でした」
<<カチッ>>
「あー、終わった。」
俺は伸びをし、息をフーッと吐いた。
これでリモート会議をしたのは5回目。俺が働く会社では3月末からリモートワークに切り替わり、職場に行くことがなくなった。通勤時の満員電車との戦いがなくなったのはいいが、誰かと話す機会が減ったことは独り身で話したがり屋の俺にとって苦痛でしかない。
「あー、誰か俺の話を聞いてくれー」
いつしかこの独り言が口癖になっていた。
「さぁて、仕事しますか」
その時、ピンポーンと音がなった。ん、誰だ？と思いつつ、インターホンの画面を見ると女性が立っていた。
「はい」
「あ、あのー、すみません。隣の部屋に越してきたんですけど、ご、ご挨拶をと思い伺いました」
可愛らしい声の女性がおどおどしながら言った。このご時世に引越しの挨拶なんて珍しいなぁと思いながら玄関を開ける。開けると黒髪ショートの小柄な可愛らしい女性が立っていた。
「あっ、こんにちは。隣に越してきました藤原、藤原ゆずなといいます。よろしくお願いします。こ、これつまらないものですがどうぞ」
「ご丁寧にありがとうございます。あっ、俺大前です。あっ、八つ橋！俺、京都出身なんですよ。藤原さんは京都出身なんですか？」
「あ、はい。今回転勤で名古屋へ来たんですけど、リモートワークになっちゃって」
久しぶりに話せるのが嬉しくて、初対面にもかかわらず20分ほどたわいもない話をしてしまった。話してると俺この子のこと好きかもと思い始めてしまった。2020。俺に春の風が吹き始めた気がする瞬間だった。


ラジオネーム 柏餅ぶらっく さんの作品

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次回の２ワードは「ベランダ」「お酒」です。第2話お待ちしています。
是非、300字くらいでお願いします。

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