気まぐれ映画評『ミッドナイト・イン・パリ』 気まぐれ映画評
気まぐれ映画評、
第3回は5月26日に公開になりました
『ミッドナイト・イン・パリ』です。
アカデミー賞脚本賞受賞作。ウディ・アレン監督の映画の舞台は、ほとんどが都会。ほとんどがニューヨーク。でも、今回はパリが舞台。コメディ、シャレ、自虐、皮肉がふんだんに盛り込まれ、セリフが多いのも特徴。誰が観ても面白いと思うタイプの作品を撮る監督ではないですが、本作はソフトなのでご安心ください。簡単に言えば、現在のパリを舞台に過去とを行き来する、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』です。
主人公は売れっ子の脚本家ギル(オーウェン・ウィルソン)、婚約者イネズは資産家の娘。その両親と4人でパリにやってくる。本当は脚本家でなく小説家になりたい夢追い人ギルが深夜に散歩をしているときに招き入れられた車に乗り込むと、ギルが「黄金時代」と思っている1920年代にタイムスリップ。そこでヘミングウェイやピカソ、フィッツジェラルド、ダリらに出会い、刺激を受けてパリの虜になっていくのです…。ギルと天才たちとの交流は予備知識があった方が面白いかもしれませんが、なくてもまあ良し。
ギルは1920年代で、ピカソの愛人でもあったアドリアナ(マリオン・コティシャール)という女性に魅かれるのですが、アドリアナはギルと一緒にタイムスリップした1890年代こそ「黄金時代」と思ってしまい、この時代に残ると言い出すわけです。「昔はよかった」と誰もが一度は思うことでしょう。だけれど、タイムスリップを繰り返したギルが気づいたのは、「いまを生きる」しかないということです。これがこの作品の骨太なメッセージ。昨日も明日もない、今日の積み重ねが人生で、その中で自分がどんな選択をしていくのか。ギルは金持ちお嬢様イネズとの婚約を破棄し、現在のパリで暮らすことを選択します。観ていても「その方がイイだろう、いい選択をした」と思うはずです(笑)。最後は雨が降るパリで、素敵なラストシーンを迎えます。
(原題『MIDNIGHT IN PARIS』)
(監督 ウディ・アレン/出演 オーウェン・ウィルソン、マリオン・コティヤール、レイチェル・マクアダムス、他)