気まぐれ映画評『永遠の0』 気まぐれ映画評
きょうは
ただいま公開中の『永遠の0』です。
原作は既読でしたが、この分厚い骨太な一冊をどの程度再現できるのか、ちょっと不安な気持ちで観始めたのですが、いやいや、杞憂でした。
開始早々から涙が流れ始め、中盤以降はずっと泣き続けてしまった気がします。それくらい丁寧に、戦争とは何か、特攻とは何かに迫り続けた良作です。天才パイロット・宮部久蔵を演じた岡田准一さん、本当に名優と言っていい域なのではないでしょうか。静かな熱演でした。戦争中に「生きたい」などと言うことを口にするのははばかられる時代に、率直に「生きること」を追い続けた宮部、しかし最後は特攻を選び、戦死する。宮部に指導された部下たちも個性が際立っていて、とてもよかったです。
劇中のセリフにもありますが、「語り継ぐこと」がこの映画の大切なテーマになっています。もちろん、『永遠の0』は、膨大な取材に基づいて作られたフィクションです。この映画が真実を描いているかどうかはわかりません。しかし、戦争が多くの命を終わらせ、多くの人生を変えてしまったことは間違いありません。映画終盤で、佐伯健太郎(三浦春馬)が歩道橋の上で空を見つめる、その空には零戦に乗った宮部久蔵が飛んでいる…、あのシーンだけは苦笑いしてしまいましたが、それ以外は映画に引き込まれっぱなしでした。
かつて私が鹿児島・知覧の「特攻平和会館」で流した涙が、この2時間半の間、よみがえってきました。