『保育士試験合格記 ①きっかけ』 日々
わたしが保育士試験に合格した件で、友人、知人からの連絡やSNSなどで、想像以上に反響があって驚いています。きょうから3回に分けて「合格記」をアップします。よろしければお付き合いください。
① きっかけ
2016年6月22日、わたしは父になりました。わたしはもともといわゆる「子ども好き」だったわけではありません。どちらかというと「どう接したらいいかわからない」というのが本音で、むしろ苦手だったかもしれません。しかし、この日をきっかけにわたしの人生観、子ども観が一変しました。
いまやわたしは子どもが大好きです。見知らぬ子でも話しかけたいくらいです。もちろんいま、世間の目を考えたらそんなことはできません(笑い)。我が子の育児も当然、妻と二人で協力し、手探り、試行錯誤しながらではありますが、一生懸命にやっているつもりです。もちろん楽しいことばかりではなく、思い通りにいかずにいら立つこともあります。自分の時間が取れないことがストレスになることもあります。それでももちろん大切な大切な我が子です。
我が家は共働き家庭です。2018年4月、我が子の保育所生活が始まりました。当時我が子はまだ1歳、大丈夫だろうか、さみしい思いはしないだろうか、とても不安なスタートでした。しかし、我が子は頑張りました。1歳児クラスのころはしょっちゅう風邪をひき、熱を出し、保育所を休むことにもなりましたが、妻との連携、協力、両親の手助けを受けながら、今では笑顔でほぼ休むことなく登園し、もう3歳児クラスも後半です。これもひとえに我が子の保育所の職員、保育士の皆さんの尽力のおかげです。自分の子どもひとりでも大変で手一杯なのに、保育士の皆さんが保育の専門家として丁寧に大切にかかわってくれているからこそ、いまの元気な我が子があります。我が子が通所するようになって「保育士は尊い職業だな、すごいな」と「職業としての保育士」に興味を持つようになりました。もちろん、日々のニュースに接し、保育所の待機児童問題や幼児、児童虐待、さらに要保護児童問題など子どもを取り巻く環境の問題についての興味、関心が尽きなくなりました。
現実的に「保育士試験を受けるのもアリか!?」と思うようになったのは、タレント・つるの剛士さんの2020年1月13日のツイッターへの投稿でした。わたしと同い年のつるのさんはこの日、保育士試験のテキストの写真を公開し、「頑張ってみます!」と受験を宣言していました。5児の父のつるのさんの挑戦に「こんな挑戦もあるんだな、同い年ですごいな」と敬意を抱きました。しかしその翌日、つるのさんに受験資格がないことが判明します。簡単に言えば「大学卒業」か「実習2880時間」が必要で、つるのさんはその条件を満たしていないということで、受験することできないということがわかったのです。ちなみにつるのさんは保育士を目指して今春から短大に通っているとのこと。これも素晴らしい挑戦です。で、わたしです。この時「そうか、僕は受験資格があるのか…」と思ってしまったんです(笑い)。真剣に勉強して筆記試験を受けるなんていうことは、26年前の大学受験が最後。今さらわたしが試験を受けて、そして受かったとしてどうなるのだろう、いや、育児となにか、保育とは何かをきちんと学ぶのもこれからの人生に役立つのではないか。そもそも勉強する時間を取り、合格までもっていくにはどう準備すればいいのだろう。とりあえず母校から卒業証明書を、そして受験申請書を取り寄せました。そこからさらに自問自答を繰り返します。決め手となったのは妻から「これからも子育ては続く、勉強したことは無駄にならない」という言葉でした。締め切りギリギリの2月上旬、受験料を納付し、申請書を送付しました。わたしは26年ぶりに受験生となりました。
保育士試験は年2回実施されます。筆記試験9科目、このすべてで6割以上の得点が必要です。その後、実技試験へと進みます。まずはこの9科目の突破が目標です。ちなみに一度合格した科目は3年間有効、いわゆる「科目別合格制」ですが、もちろん目指すは9科目一発合格です。長々と勉強を続ける自信もありません。4月下旬の試験まで2カ月半、この2カ月半で合格までもっていくという目標を立て、勉強法、スケジュールを熟考しました。
仕事、育児の隙間時間を見つけ、「毎日最低1時間」を目標に勉強を続けます。法学部出身なので法律系の問題や、歴史問題などはなじみやすく頭に入ってきます。また育児のおかげで、ミルクの温度がどうだとか予防接種を受ける時期はいつだとか、そういえばそうだったなと活かされた知識もたくさんありました。ただ困ったのは「保育実習理論」科目の音楽や美術の問題です。楽譜を読むのが精いっぱいのわたし。「移調」だ「コード」だと言われても何のことやらわからない。結局、苦手科目は直前2週間に集中、それまでに8科目を確実に合格レベルへという方針で勉強を続けました。
まずまず手応えを感じながら机に向かっていましたが、自分の力ではどうにもならない、大きな壁が立ちはだかりました。新型コロナウイルスです。