『英智、引退』 日々
1998年12月、
新入団選手の記者会見場でのインタビューが、
私と英智選手との初めての会話でした。
あれから14年、
英智選手が引退する日が来ました。
最近、私とグラウンドで会うと、英智選手はうれしそうに
「ジーンズ、チノパン、ブラックジーンズ、スーツ、スラックス、…」と
毎日話しかけてきました。
何のことか?
私の毎日の服装を記憶していたんです。
ジーンズだと「あ、今日は実況じゃないですね!」とか。
先日も、新しいスーツを着ている私を見つけると
「かっこいいスーツですね!新調したんですか?きょうは実況ですか?」と言われました。
グラウンドに出てきて真っ先に。
これがプロ野球選手とアナウンサーの会話ですか(笑)。
実は、その日が、
英智選手が球団からコーチ転進を打診された日でした。
今年4月、
私が英智選手に、
野球について真剣に話を聞いた日がありました。
走塁について。
当時、本塁憤死が目立ち、
三塁コーチだった平野コーチの判断の是非が新聞各紙に
あれこれ取り上げられていたときのことです。
私が聞きたかったことは1点。
「走塁する側にミスはないのか」。
英智選手からは
「さすが!よく観ていますね!」と軽く茶化されたあと、
「実は、きのうの試合後に○○選手に言ったんです。
○○、お前のスタートと打球判断、良くないんじゃない?
○○は将来レギュラーを取る選手なんだから、
そういう細かいところを油断せずに、レベルをあげていこうな、と」。
この話を聞きだしたことで、
取材者としては「いい話が聞けた」という喜びと同時に、
英智選手は将来、間違いなく良い指導者になるのと確信しました。
若手選手に積極的に声をかける一方で、
このエピソードのように、ミスにはしっかり指導する。
引退後の英智も、
間違いなくドラゴンズの大切な戦力でしょう。
仕事としてでなく、
人として本当に応援したいと思わせてくれた英智選手。
まだ試合は続きます。
「お疲れさま」はもう少し先に、
かっこいいスーツを着て直接伝えます。
ちなみに
○○選手は英智選手の言ったとおり、
レギュラーどころか、
今季、盗塁王を取りそうです。