『みんなが平らに』 日々
ナゴヤ球場の記者席に花が飾ってあります。
ここは故・稲葉光雄投手コーチが試合中にいつも座っていた
「稲葉シート」です。
稲葉さんが亡くなってから、
元東海ラジオアナウンサー・相羽としえさんが
花を買ってきて、飾ってくれているんです。
きょうも、私は
稲葉さんの生前と同じように、
「稲葉シート」の隣に座って
試合を観ていました。
きょうの2軍戦で興味深く観ていた場面があります。
1回表、阪神はゼロ。
1回裏、中日は藤井が右安、柳田が二失で出塁し、
打席には期待の新人・高橋周平が入りました。
あなたが監督であれば、どういうサインを出しますか?
ファン的目線で言えば、
高橋周が打つのを観たい。
首脳陣が、高橋周を将来の中軸選手と考えるのであれば、
自由に打たせるのがいいのだろうか?
でも、大事な先制点(チームは連敗中)だから、
手堅く送りバントも「あり」でしょう。
あれこれ考えつつも、
私は「送りバント」をするだろうと思って観ていました。
そして、
高橋周はキッチリと送りバントを決め、
2点を先制したのです。
試合後、
あの場面の采配について
鈴木2軍監督に聞いてみました。
「バント?
何の迷いもなかったね。
チームでやっているんだから」と
即答でした。
「今まで何度も(同じような場面で)打たせてきたよ。
でも、きょうはあの場面、どうしても1点欲しかった。
それに、1軍で同じ場面でも、
今の周平にはバントのサインが出ると思う」。
私もそう思います。
2軍でやっていないことは1軍ではできません。
そしてハッとさせられた鈴木2軍監督のひとことは
「あの場面で周平にバントをさせると、
みんなが平らになる」です。
2軍選手であれば、
おそらく誰でも送りバントのサインが出る場面でしょう。
そこで、もし高橋周に打たせれば
「なんでアイツにはバントじゃないんだ」という疑念が
選手の気持ちに沸いてしまうのです。
それが
「みんなが平らになる」ということ。
これが和田選手やブランコ選手ならバントではありません。
18歳の1年生をチームから浮かせないための「バント」なのです。
決めた高橋周、お見事。
その後、二塁ゴロで走者を還した中田亮、
適時打の岩崎達、素晴らしい。
「チームでやっている」という鈴木監督の言葉の意味が
よくわかった一場面でした。
野球は深い。
気まぐれ映画評『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』 気まぐれ映画評
2カ月ぶりの気まぐれ映画評、
第5回は
ただいま公開中の
『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』です。
まず、東海ラジオ『ごぶサタデー』でおなじみの小島一宏さんの出演、しかと確認いたしました。
「新たなる希望」という副題に『スターウォーズ』か!とツッコミを入れたくなったが、おなじみのあのメロディ『RHYTHM AND POLICE』が流れてくるだけで気持ちが昂ぶった。テレビドラマが始まったのが97年。あれから15年、ついにこの国民的ドラマが完結する、というだけで観る理由がある。テレビドラマをもう10年以上観ていない私が最後に観たのが『踊る〜』かも。映画もスピンオフ作品含めてほとんど観ているはずだから、熱狂的でないにしても、ライトな『踊る〜』ファンであることは間違いない。先日、秋田で柳葉敏郎さんにお会いしたときも「室井さんだ!」と思ったくらいだから。
なぜか唐揚げ屋で働く青島とすみれさん。いつも通りコミカルなイントロから、いつも通り事件が起こり、いつも通り警察庁と現場の軋轢が生まれるが、いつも通り青島と室井が頑張って、いつも通り観る側を熱くさせる。万事、いつも通りの安心感が『踊る〜』のいいところであり、国民的ドラマである理由でしょう。もちろん、高いレベルの「いつも通り」だから、面白い。ワクワクする。熱くなる。しかし、15年経って、やっと警察改革の入り口に立っただけだから、組織やシステムを劇的に変えるというのは難しいことだと痛切に感じる。ああ、胸が痛む。室井さんみたいに、耐えて出世しないと。
クライマックスでのすみれさんの行動には失笑でちょっと萎えたが、そこはご愛嬌。オープニング(めちゃくちゃカッコいい!)、エンドロールで過去の名場面などが映るが、和久さんを観ると胸が熱くなった、なんてな。ひとつの時代が過ぎました。