気まぐれ映画評『へルタースケルター』 気まぐれ映画評
久しぶりの気まぐれ映画評、
第4回は7月14日公開の
『へルタースケルター』です。
岡本太郎の有名な「芸術の三原則」は、【芸術は、きれいであってはいけない、巧くあってはいけない、心地よくあってはいけない】ですが、その観点から言えば、この作品は間違いなく「芸術」です。なぜなら、観てから1ヵ月経った今も、私が「心地よくない」から。衝撃的でした。
「元ブス」だけれど、目玉と骨と耳とアソコ以外すべて整形手術を施してトップスターになった主人公りりこ(沢尻エリカ)。そのりりこが華やかな芸能界を謳歌する一方で、後遺症から皮膚が崩れ始め、後輩モデルに追い上げられ、精神が崩壊していくさまを、それはもう気味悪く、人間の醜い部分まで徹底的に描いています。沢尻エリカの体を張った演技にばかり注目が集まっていますが、作品の中身も相当「エグイ」。
売れるためならなんでもする、かわいくなればなんでもする、見た目ばかり、いや、見た目だけしか気にしないりりこ。そのりりこに集まってくる人間も、みな空っぽ。自分の彼氏を寝取られても怒りもしない空っぽなマネージャー、りりこの誘いにあっさり乗ってしまう空っぽなマネージャーの彼氏。りりこの彼氏も、婚約者がいながらりりことの逢瀬を重ねる空っぽな男。名誉、金、性、…、欲求にまみれた登場人物ばかり。「最高のショーを見せてあげる」と言ったりりこは、確かに最高のショーを世の中に見せ続けていきました。消えていくまで。鮮やかな色使いで描かれた「へルタースケルター」の世界はまさに「色即是空」。因と縁によって存在しているだけで、固有の本質を持っていない「空」です。
自分も空っぽだ、いや、私は空っぽではない。観終わった後の感想も様々でしょう。なぜなら、この「芸術」は「心地よくなく」、心の底をかき乱しますので。女の執念、プライド、そして人間の弱さを堪能できる同作、どうぞご覧あれ。