たたかわない 定期列車
ラジオパーソナリティの山本シュウさんと話す機会があった。
週末深夜のファミレスはさながらラジオの公開放送スタジオ。
26歳でニューヨークに渡ったこと、30歳目前でのラジオデビュー、
そこで繰り広げた破天荒な企画の数々、大人の事情による突然の降板劇…
PTA会長経験から自身の子育て、“問題児”へのアプローチ、
ニュースをにぎわす教育問題にも話が広がった。
同業者として父親として、全身を耳にして愉しく熱く聴き入った。
そこで出てきた言葉が「戦わない」。
ドリアン助川さんとまったく同じ言葉が出てきたのに驚いた。
二人ともラジオや人生というフィールドでさまざまな相手と戦ったはずだ。
リスナー、スタッフ、スポンサー、世間、自分自身…
だが結論は「戦わない」なのだ。
「おまえらと戦うために東海ラジオにやってきた」
深夜番組「流石の源石」に届いたハガキに対して
とっさに答えたフレーズを今も覚えている。
十数年経った今も何かと戦っている。
「戦わない」をめぐる奇妙な一致。
意外だったがやがて腑に落ちた。
戦いは手段であり目的ではないということ。
桜宮高校の問題、アルジェリアの人質事件、メディアの揚げ足取り…
昨今のニュースもあらかたこれで説明がつく。
説明はつくが、一度目的化したものを手段に戻すのは容易ではない。
だから問題は大きくなるし、同じ愚を繰り返す。
シュウさんやドリアンさんは数々の相手と向き合い、傷つき、理解することで
「戦わない」ことを導き出せる域にまで達したのだと想像する。
突き抜けるほどの人生経験や激しすぎる葛藤。
彼らと同業者と名乗るのも恥ずかしいほど、
ラジオパーソナリティとしての自分には何もない。
だから徒手空拳のようにバトルを振りかざすのだろう。
情けないことだが受け入れようと思う。
亀渕昭信さんなど、ラジオの先人たちと会う機会が増えた。
刺激を受けられることを素直に喜びたい。