瞬間の先に 定期列車
ドラゴンズの2024シーズンが終了しました。
ありがとうございました。
10月5日は2度目の実況。ドラゴンズ田島慎二投手の引退試合にしてベイスターズ松本隆之介投手のプロ初登板。初のホームラン実況に初のサヨナラ実況。ほかにも首位打者、最多ホールド、規定投球回がかかる選手たちの記録をかけた戦い。そして引退セレモニー…いろいろなことがありすぎました。
2度目だから分かる怖さや至らなさ。試合前ではなく試合中に胃が痛くなりました。プロ野球草創期に活躍した和田信賢アナウンサーはスポーツ実況をこう例えています。瞬間芸術。筋書きなく起こる出来事に瞬間瞬間で最適なことばを選び、伝える。しかしことばを選び間違えたり、そのときはよかったと思っても後悔することだってあります。いや、そればっかりです。デビュー戦だけでは分からないその先を知ることができました。今後に活かしてまいります。
翌10月6日は立浪和義監督最後の指揮。試合ではベンチレポートを務めました。「負けたので多くは語りません」。セレモニーを締めくくったことばに3年間の覚悟と責任が見て取れました。毀誉褒貶はありますが、勝っても負けても必ず何かをことばにする人でした。お疲れさまでした。
同郷で同い年の大西崇之外野守備走塁コーチもユニフォームを脱ぎました。ワイド番組「抽斗!」のときは初回から数多く共演。大阪弁どうしの会話になると「アナウンサーやのに大阪弁きっついなあ」。自転車で家に帰る姿を目撃されて「きょうも自転車で来てるんか?」。話の継ぎ穂を見つけるのがうまい人でした。その後解説者からコーチへ。源石も去年途中からスポーツ担当に。不安だらけで球場に現れたところを見つけるや開口一番「なんでおるん?」。その一言で心が軽くなりました。初のヒーローインタビューの前には「がんばりや!」。岐阜でのゲームの前には「きょうも自転車で来たんか?」。きょうの試合前には「きのうの実況うまいこといった?」。そこはええと小さく嘘をつきました。カッコよかったです。ありがとうございました。
10月10日、井上一樹新監督誕生。2年目にしてドラゴンズの大きな変わり目に立ち会っています。瞬間というヨコ糸に歴史と経験というタテ糸を織りこんで、シーズンオフの取材に臨みます。ひきつづきお手柔らかに願います。