確かに行ったんだな! 定期列車
生まれたとき、すでにビートルズは解散していた。
ラジオから流れてくるビートルズにはなにか膜のようなものが張っていた。
ビートルズを語る大人たちは羨ましくもあり嫉妬を覚えたりもした。
ポール・マッカートニーはスネークマンショーの中の人だった。
高校生のとき何気なくFMをエアチェックしたカセットテープの中にウィングスが入っていた。
ウォークマンで何度も再生した。生まれて初めて聴く生きたビートルズのような気がした。
初めて名古屋のステージに立ったポールは少ししょぼくれて見えた。
声もしわがれて聴こえた。しかしポールは休まない。
機関銃のようにビートルズ以前から最新曲まで引っ張り出し、
ギターやピアノを取っ替え引っ替え弾く。
声も大きくハリが出てくる。日本語も名古屋弁もツルツル出てくる。
そしてポールは若返る。3時間、30曲は奏でただろうか。
ぐるり360度。
ナゴヤドームの観客にはビートルズとともに生きた人やそうでない人もいて、
彼らが一体となってHEY JUDEに合わせNAgoyaと書かれたボードを掲げる。
LET IT BEに合わせスマホのライトを左右に振る。
ポールのためにアンコールに合わせ人文字を作る。
カメラが高級品だった時代からスマホを持ち込み撮影自由になった現代まで
駆け抜けてきたポールはやはり偉大だ。
そして終演を待たずにスマホの電池が切れた。ポールを見習え。
47歳と1日。
アンコールのBIRTHDAYが聴こえた瞬間、
ビートルズに張っていた膜が消えた。