ロマンポルノ 定期列車
朝からほのかなイカの匂いを漂わせ、「花芯の刺青 濡れた壷」を観る。
元祖「SMの女王」初代「花と蛇」の谷ナオミ、若き蟹江敬三の演技が光る。
人形作家、歌舞伎役者、彫物師。昭和後期に息づく伝統美。
和服の母と洋服の娘が一人の男を奪い合う。対比の中で蠢く官能。
露出、隠し、暈しの巧み。雨音、墨入れ、喘ぎ声の同期。
予算が表現を縛りつつ、エロスありきで色と音が躍動する。
制限と表現は表裏一体だ。
「これ観た!」「観たかったなぁ…」
ずらり並んだポスターにひとりごつじいちゃんたち。
先ごろ亡くなった地井武男の名にしみじみ。
客席には若い女性の姿もあった。
上映後はじいちゃんたちでトイレが満員。
チケットが「G-11」なんてできすぎだ。
AVやネットの普及でエロスがパーソナルになった今、
公共の場でエロスを分かち合う貴重な体験。
欲望の果てにある哀しみに、自己満足より自問自答する自分の姿があった。
子どもの頃からのひそかな憧れは、実にすがすがしく裏切られた。
「生きつづけるロマンポルノ」 7月8日まで名駅ピカデリー