アベロクさん 定期列車
元ABCアナウンサーの
安部憲幸さんが亡くなりました。
71歳。発表したのは先輩の
道上洋三アナでした。
“アベロク”こと安部さんといえば1988年10月19日。
プロ野球“パ・リーグの一番長い日”として語り継がれる「10.19」。
川崎球場のロッテ×近鉄ダブルヘッダー第2試合のテレビ実況は
最初地元大阪だけで放送されていましたが、全国から届いた
「熱戦をテレビで見たい!」という声がテレビ朝日の編成を動かし、
「ニュースステーション」の内容を大幅に変更して中継されました。
BSはNHKだけ、CSもネットもradikoもなかったころの出来事でした。
のりかえ≫そのときの思い出
接戦続く実況で安部さんはロッテの水上善雄三塁手の好プレーに
「ジスイズプロ野球!」という名言を残します。
延長戦時間切れ引き分けで優勝の可能性がなくなりながらも
10回裏の守備につかなくてはならなかった近鉄ナインに
「優勝への虹、渡りきれませんでしたっ!」と涙声で叫ぶ安部さん。
絶叫型でありましたが、不思議とうるさくなかったのは
自身の心に正直なことばが、聴く者の心に寄り添っていたからでした。
“王道”の阪神戦ではなく“近鉄番”として名を馳せた安部さん。
1990年に野茂英雄投手が入団し、登板試合の実況も数多くこなしました。
フォークボールを投げるときは安部さんもフォークの握りで立ち上がり、
「スポーン!」「ズバーン!」「ブスッ!」と擬音語だけで三振を表現。
彼の実況は閑古鳥鳴く球場に客を呼び、パ・リーグに今の隆盛を呼びました。
90年代半ばにはテレビゲーム「実況パワフルプロ野球」にも起用されました。
初の実況音声合成で安部さんの名調子が聴けるとあって、よく遊んだものです。
系列局の人に聴いた話ですが、定時ニュースで二酸化窒素=NO2を
エヌオーツーではなく「ナンバートゥー」と読んだことも。
真面目ゆえのお茶目なのでしょう。とにかく大好きな実況アナでした。
あちらで見届けられなかったバファローズの日本一を伝えてください。