城が赤く染まったと聞いて… 定期列車
大阪城へやってきました。
登城は15年ぶり。
「天下統一なう」などとつぶやいてしまいました。いまさら。
天守閣内の展示にあった「大阪城の謎」。
石山本願寺、豊臣大坂城、徳川大坂城…
すべてが従前の施設を壊して造ったのが興味深いところ。
現在の城郭は大坂夏の陣以降に築かれた徳川時代のもので、
その下に豊臣時代の遺構が眠っているといいますが全貌は謎のまま。
だから東京を目の敵にし、地下に独立国の存在を信じるのです。なにわっ子は。
このミスマッチも大阪城の顔。明治時代には砲兵工廠が、
昭和時代には陸軍庁舎が建てられました。
小学生の頃ここで絵を描きました。
石垣をいくつもいくつも描きました。
天守閣は大きく大きく描きました。
絵の記憶と写真の記録は違っても、
描いた記憶だけは色褪せません。
この日大阪に行ったのは高校時代の恩師に会うため。
国語担当の篠原先生も御年七十。二年前の前回よりお元気でした。
毎週漢字小テストで鍛えられた思い出は、今の仕事の基礎になっています。
夏休みの宿題として学年200人それぞれに異なる課題図書を与え、
読書感想文を求めたことも…宴席はそんな話題で持ちきりでした。
凄いのは先生がそれぞれの課題図書を25年経った今も覚えていること。
冴えわたる舌鋒はまるで授業を聞いているよう。
「名作は50歳までに読め」
「教育に時効はない」
二つの言葉が40歳の生徒たちに響きました。
体力のあるうちに優れた作品に触れ、
若いときと異なる感想を抱く。
一度相手を傷つけた言葉は、
二度と許されることはない。
教師としての矜持と教訓は、
そのまま私たちの生きざまにも当てはまります。
不惑を迎えた今だからこそ分かる「授業」でした。
級友と朝まで酒を酌み交わし、アーバンライナー一番列車で名古屋へ。
上本町(谷町九丁目)駅の入口は雑居ビルにひっそりあるのが特徴。
「プリンセス・トヨトミ」で描かれたようなもう一つの大阪があるのではないか。
そう思わせる佇まい。事実ここは物語の舞台、空堀商店街の近くです。
独立国に迷い込んだような、タイムマシンに乗ったような大阪訪問でした。