のりかえ≫発表！音博の元気週間

大学生の就職活動が解禁されました。

「源石さんはどうして
　アナウンサーになったのですか？」

「いい質問ですね！食っていくためです」

たいていポカーンとされます。
もちろん憧れの職業であり好きな仕事ですが。
それだけではなることはできても続けることは難しかったでしょう。

本当の動機はこうです。
「社会に出れば苦労する。どうせなら愉しく苦労したい」
子どものころからしゃべることが大好きで、
しゃべることと同じくらいラジオやテレビが大好きで、
ラジオを聴くよりラジオでしゃべるほうが大好きになって…
それを一生の仕事にできればいいなと思ってアナウンサーを志しました。
なれたことも続けることも幸運なこと。日々そのことを噛みしめています。
共通語の壁に苦しんだり、いろんな人に叱られたり、番組が打ち切られたり。
思いどおりに行かないことも多々ありますが、
なんとか受け入れられるのは「愉しく苦労」がベースにあるからかと。

最近、こんな話を聞きました。
「激務で身体を壊してしまい、志半ばで辞めざるを得なかった」
少し前までの自分ならこう思ったでしょう。
「なんで辞めるんだ、もったいない」と。
せっかく就いた職を投げ出すのは我慢が足りない気がしますし、
なにより自分自身に仕事を辞めたり変わったりした経験がありません。
そして仕事の経験を積めば積むほど相手に多くのものを望んでしまいます。
しかし今回ばかりは違いました。
「大変な決断でしたね。決断した自分自身を信じてください」

世のため、人のため、自分のため。
三つ揃ってこその仕事。どれが欠けても務まりません。
他人の求めに応じてばかりだと「こんなはずでは」と自分を見失い、
自分の気持ちを優先してばかりだと「こんなはずでは」と他人を恨む。
来し方を振り返るとつくづくそこらへんのバランスが悪かったなぁと。
がんばりすぎるとよく崩れるんですよこのバランスが。
大きな声では言えませんが、最近あんまりがんばってません。
でもがんばらないからこそ見える風景って結構あるんですね。
そんなことにいまさらながら気づきました。恥ずかしながら。

世のため、人のため、自分のため。
三つがいきなり揃うことは稀でしょう。
それでも自分が思っているのとは異なる適性や才能を他人が見出し、
開花させてくれることもあります。いや経験上むしろそのほうが多かったです。
自分のがんばりを周りの見る目がポーンと超越するんですね。
もちろんどちらも無駄ではないわけですが。
それが結果的に“世のため、人のため、自分のため”につながると思います。

「自分の適性に合った仕事を見つけよう」
「だから自己分析をしよう」
就活生への常套句ですが、それだけでは物足りない気がしていました。
いくら才能があっても、その才能が職場ですでに
“間に合っている”ものならば採用には至りません。
だから不採用を自分の能力不足のせいにしても意味がありません。
会社にとって“足りない”才能が何なのか。それを知る術はありません。
残念ですがそこは受身にならざるを得ないところです。
がんばっても仕方ない部分です。

「天職」は英語で"calling"というそうです。
「雇用」という意味もあります。
つまり就職するとは“呼ばれる”ことなんです。
自分で探す→相手に呼ばれる→自分が応える
ゴスペルの“コール＆レスポンス”のような関係を築けるかどうか。
呼ばれたり応えたりにお互い無理はないかどうか。
就職活動中だけでなく、就職した後も大切なことです。

先日、朝番組の学生ADだった人に取材先で出会いました。
最初は分からなかったくらいすっかり社会人の風貌でした。
きっといろんな苦労を重ねているのでしょうが、
仕事を愉しもう、まっとうしようとする表情が見て取れました。
未熟でも構いません。不完全でも構いません。
補ってくれる人は必ずいます。社会というのはそういうところです。
いや、社会人を長く務めていたって未熟であり不完全なものです。
それを補ってくれるのが、これから社会にやってくるあなたです。
どうか自分にも相手にも完璧を求めないでください。
それぞれが欠けたパーツを埋めあうパズルのピースです。