読書感想文に困ったら 定期列車
これを読みたまえ中高生諸君!
大人も必読!
2009年にこの作品が映画化されたとき、
メガホンを取った田口トモロヲ監督に話を聞きました。
田口監督、「プロジェクトX」でおなじみのあの声で
「おーい!童貞マインド、持ってるか〜!?」
原作者みうらじゅんさんの畏友である田口さん。
同じくみうら作品の「アイデン&ティティ」でも監督を務めました。
少年時代のモヤモヤした気持ちを活写し再現できる貴重な二人。
それを田口さんは「童貞マインド」と名づけました。
みうらさんは別のインタビューでこう言いました。
「童貞はこじらせるもの」
50歳でも真顔で言える「永遠の童貞」はなかなかいません。
みうらさんにとって童貞は、肉体的にはともかく
精神的な支え、あるいは生きざまと言っていいでしょう。
来し方を振り返ると、中高生時分の自分なんて、
ましてや男子校の夏休みなんて毎日がモヤモヤ。
動物的本能の萌芽が抑えられない一方で、
好意的感情の露出の仕方が分からない。
思春期の異性の気持ちが分からぬまま、
バカな同性同士集まって空想妄想を爆発。
功罪ないまぜの童貞マインドは、
大人になった今なおこじらせています。
物語は男子高校生3人による「旅」がベース。
そこには子どもだった自分と決別したい
実に不器用な脱皮の様子が描かれています。
源石も高1の夏休みに自転車で
往復40キロの旅に出たことがありました。
あてなどありません。ただ「旅」がしたかったのです。
話は変わりますが、大阪で中学生2人が殺害された事件も
発端となる「家出」は彼らなりの「旅」だったのではないでしょうか。
しかし旅はリスクを伴うのもまた事実です。そして帰ってきてこそ旅。
自転車で旅した場所と事件現場が近かっただけに胸がふさがります。
さてみうらさんは「マイブーム」「ゆるキャラ」の生みの親。
言葉の創作もさることながら、
普通なら自分の胸のうちにしまっておきたい価値観を
多少の恥じらいを交えつつ他者に広げたことこそ真骨頂でしょう。
「色即ぜねれいしょん」に共感できるのは、
同じ男子校出身のみうらさんが、
秀才にもヤンキーにもなりきれないフツーの高校生が
精一杯の背伸びをおそるおそるするさまを、
自分自身をモデルに描ききったからでしょう。
こんなの自分なら恥ずかしくてできません。
でもこの作品に釣られてだったらちょっと言えるかも。
そう思わせるのが憎いところです。
書かずもがなの感想文を書いてしまいました。
眠れなくて5年ぶりに手に取った「色即ぜねれいしょん」。
5年後に読むとまた趣が違うんでしょうね。
「48歳の童貞マインド」やいかに。