「デザイナーにできることはほんの一割。
　既に決まっている九割の上にどう積み上げるか」
「いい加減なデザインの公共物は傷つけられ、
　優れたデザインは大事にされる。
　感性の鋭い子どもたちはそれを見抜く」
「公の空間と私の空間。
　この違いを小さいときから教えるのが大人の役割」

2009年、工業デザイナー水戸岡鋭治さんを
取材したときのことばである。

豪華列車「ななつ星」を手掛けた彼が認められたのは40歳過ぎだった。
燻り、戦い、花開く。
根底にあるのは広く永く愛され使われるものを作る意識と意欲。
目指すのはデザインを通じた公共リテラシーの向上だ。
そのためのワカリやすくワクワクするデザインである。

翻って東京五輪問題。
エンブレムだけがデザインじゃない。
パクリや賞獲り疑惑も小さなことだ。
競技場問題もしかり。

イベントをどう成功させるかだけでなく、
イベントを通じて何を目指すのか。
その意識を共有しないとこの手の問題は繰り返される。
特定の人が持つだけではなく「共有」しないと。
だって公共物だもん。

ここまで書いてふと。
先の戦争もデザインがうまくいかなかったから負けたのか？

こう戦ってこれを落としどころにする。
それを見誤ったからいまだに引きずってるんじゃないかなあと。
いや、見誤ったんじゃなくて見失ったのかな。
いやいや、見失ったんじゃなくて見積もってなかったのかな。
とりあえずノープランで進んだから誰も責任とれないし。
あれ…こういう場面って今も普通にあるんじゃないの？

一事が万事こういうふう。
そう考えると戦後どころか戦争も終わってないよね。
そういう性質を備えていることにいい加減気づかないと。
それでもいいと思うんだったら、
やっぱヤバイことには手を出さない方がいいよね。

まずは自分の生きざまからデザインする。
そこから始めようと思いました。