幸福の黄色いハンカチ 定期列車
俳優の高倉健さんが亡くなった。享年83。
映画「幸福の黄色いハンカチ」の舞台を訪ねたことがあった。
北海道夕張市、2006年11月20日。8年前のきょうである。
市街地にあるロケ現場。よく分かる解説だが切ない。
ロケ地「小径」から外に出ると、名作映画の手描き看板がズラリ。
最もそそられたのが「千葉ゴルゴ」。
…話が逸れた。
黄色いハンカチがはためく場所を目指す。
歩けども、歩けども、歩けどもたどり着かない。
歩けども、歩けども、歩けども人に会わない。
時の厳しさに磨きぬかれた建物たちが胸に迫る。
5キロは歩いた。上下でバス停の名が違うがここだろう。
炭住を望む小高い丘を登ったところにそれはあった。
ススキを揺らす冷たい風に汗も乾いた。
何もかもがアースカラーに見える風景に原色は新鮮だ。
映画に出てきた真っ赤なファミリアを重ねて見る。
構内が整理されがらんとした夕張駅から札幌へ。
かつては石炭を満載した貨車が行き交った場所だ。
ぽつり1両たたずむディーゼルカーがやけに似合う。
とんがり屋根や風見鶏さえ絵になっている。
映画「鉄道員(ぽっぽや)」の舞台も終着駅だった。
劇中流れていた「テネシーワルツ」をふと思い出す。
健さんの妻だった江利チエミによるカバーで。
高倉健さんの訃報を聞いて真っ先に思い出したのは
実は幸福の黄色いハンカチでも鉄道員でもなく、
岸谷五朗さんの深夜ラジオのゲストに来た健さんが
「どうも!緒方拳です!!」
と挨拶したエピソード。周りは凍りついたらしい。
そんなお茶目な美学を持った健さんに合掌。