ドイツチェコ小盛源旅行(8) 定期列車
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プラハ最後の夜、最後の日。
“ことらトラム”は今日も行く。
12月26日夜、国立マリオネット劇場へ。
チェコは人形劇の盛んな国。
木彫りの人形製作が盛んだったことはもちろん、
抑圧された市民の感情を慰める芝居も数多い。
これらを背景に1990年、国立マリオネット劇場開場。
国立とはいえこぢんまりした内外装に好感が持てる。
ただし間口が狭く探しにくかった。
演目は1991年から続く「ドン・ジョバンニ」。
ここプラハで初演されたモーツァルトのオペラが原作だが、
ドタバタ喜劇の要素もあり子どもから大人まで楽しめる。
時折人形遣いまでも飛び出すハチャメチャぶりだが、
不思議なことに上手い落語のように“演者が消える”。
それだけ人形の動きに“魂”があった。
言葉は分からずともことらはよく笑う。なによりの証拠だ。
翌27日はプラハ最終日。
チェコに来たならばキュビズム建築を見なければならない。
ピカソの影響を受け、チェコで独自の発展を遂げた建築手法である。
20世紀初頭、ホホル、ゴチャール、ヤナークという3人の若き建築家が
10数年というごくわずかな期間に情熱を傾けた“作品”が見られる。
写真の「ブラック・マドンナ」は1912年築。設計はゴチャール。
アールデコやアールヌーボーと競い合うように旧市街中心部に聳える。
入口やドア枠に至るまでキュビズムが貫かれているかと思えば…
螺旋階段はこの造形。ギャップに萌えざるをえない。
1階はキュビズムグッズを売る店、2階はカフェになっている。
窓枠のシルエットにしばし見とれる。来てよかった。
旧市庁舎にある“オルロイ”こと天文時計もプラハの象徴。
太陽や月の動きを示す文字盤、キリストの使徒の仕掛け人形、きめ細かな装飾。
これ以上美しいものを作らせぬよう、時の為政者が設計者の目をつぶしたという話も。
毎正時動く時計を見ようとごった返す観光客の間を馬車が通る。
石畳を転がる車輪の音もまたよい。
旧市庁舎前の広場でもクリスマスマーケット。1月1日まで行われる。
この旅初めての青空。プラハに春が来たようだ。
広場に四時の鐘が鳴る。どうやら時が来たようだ。
「ドイツチェコ小盛源旅行」 完
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