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ゲンカレチ 専務車掌 源石和輝

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さよならさんびゃく 定期列車

去年7月以来の長期休暇。
角度を変えて日本を見つめなおす旅に出た。


2012年3月10日(土)
名古屋発11時58分の「こだま650号」に乗る。
こだまの指定を取るなんて何年ぶりだろう。


それもこれも3月16日で引退の新幹線300系のため。
駅ごとに見納めの老若男女が人垣を作り、
構内放送がけたたましく注意を喚起していた。


団体客などで埋まる指定席が息苦しく自由席に移動。
ガラ空きの車内にいささか拍子抜けする。
新幹線好きの息子は水を得た魚のように車内探検。
「300系バイバイ!」と殊勝にもエールを送る。


平成5年=1993年製を表す銘板。
その1年前、初代「のぞみ」として300系はデビューした。
最高時速270キロは従来の50キロ増し。
東京~新大阪2時間30分は19分の短縮。
現在の東海道・山陽新幹線ダイヤの基礎をなす革命児だった。
下りの1本は名古屋を通過する「問題児」でもあった。

初めて乗ったのは就職活動中の1994年。
名古屋と大阪で面接をハシゴするため「仕方なく」利用した。
今よりも相対的に相当高かったのぞみ料金をしぶしぶ支払い、
新大阪に着いたときは速さに驚くよりも呆気なさに腹が立った。
0系や100系にあった食堂車はなく、シートも軽く感じる味気なさ。
バブル崩壊後の空虚さも相まって、300系はどうも好きになれなかった。
華やかさやゆとりを棄て、またモーレツの夢を見ようというのか。
好きではない表現だが「失われた20年」と重なる気がしてならない。
引退に際してこういう面がほとんど報じられないのは残念である。
遠距離恋愛のほろ苦さを運んだことも陰影を際立たせるのだが。

しかしそこは「鉄」の性。
なくなると思うとホイホイ乗りにきてしまう。
子どもの思い出づくりという名目のために。
つきあってくれる妻にはひたすら感謝だ。


通過待ちの間に駅弁を所望するのも各駅停車の旅の醍醐味である。

300系の晩年はこれまでの老朽車両の例に漏れず「こだま」中心の運用に。
ビジネスマンの出張の楽しみを奪い、恋愛の距離を縮めた立役者は、
ひたすら先を急ぐことを棄て、ひと駅ごとに人を吐き出し吸い込む。
その「呼吸」は過密化した「のぞみ」の狭間でも確かに息づいている。
速く走って次の駅に飛び込み、後の列車をやり過ごし、また次の駅へ。
300系がこだまに徹することで、多くののぞみが活きることになった。
日本の鉄道史において300系の登場は「失われた20年」ではなかった。
あれほど旅情のなさを腐したのに、長く走るとそれなりに情も湧く。
いやそれはすべての鉄道車両が作り出すことのできる「年輪」である。

時は金なり。

急ぐために時間をカネで買うのか、少し安い値段でゆっくり旅を愉しむのか。
人としての価値を問うているのではない。
自分自身も出張なら前者だし、「乗り鉄」としては後者に重きを置く。
0系、100系、300系…歴代の車両が年輪とともに両者を演じてきた。
これからは700系やN700系が役割を担うだろう。
その妙味が鉄道趣味人を惹きつけて止まないのだ。
しかも趣味人ならずとも、引退の姿を一目焼きつけようと押し寄せるのはなぜか。
昨今の鉄道ブームだけでは説明できない。
鉄道が日本の文化の一翼をなすものであり、新幹線はその最たるものだからだ。
今や鉄道は、国民共有の郷愁をもかきたてるひとつの財産になっている。


14時47分、東京着。
300系は「ひかり」となって岡山へと折り返していった。
ここから25府県に新幹線はつながっている。
次はどこへ行こうか。


東京から乗ったのはE1系Max。
東海道・山陽新幹線では見なくなって久しい二階建て車両だ。
一直線に、しかも頻繁に大阪や九州からやってくる東海道・山陽新幹線とは違い、
青森、秋田、山形、新潟、長野に枝分かれした路線が東京に集中するため、
限られたダイヤで多くの乗客を運ばなければならない事情が東北・上越新幹線にはある。


そんな事情もあって、2階自由席は3列+3列でシートは倒れない。
いかにも詰め込み思想だが構わず陣取る。
思い出づくりに余念がないのは父か子か。


昭和の新幹線の象徴、0系!
…ではなく、JR東日本版の200系。
100系や300系の先輩だが未だ現役である。
車両を極限まで酷使するか長く使うか。
同じ新幹線でもJR各社で考え方が異なるのは興味深い。


国境のトンネルを越えれば雪国というのは本当だった。
恥ずかしながら開業から30年でようやく上越新幹線童貞喪失である。
「Maxとき333号」よ、Maxにおバカな僕達を運んでくれてありがとう!
東京発16時12分、新潟着18時17分。
それにしても駅名板の昭和なことよ。
のりつぎ≫またきてきたぐに

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