一票を持つあなたへ 定期列車
12月2日、衆議院選挙が公示されました。
14日の投開票日に放送する開票特番に向け、
東海ラジオのスタッフも準備を進めています。
源石も24:00からスタジオ進行役を務めます。
序盤には議席数予測第一弾が出ました。
報道する側にとっては貴重な資料ですが、
有権者にとってはどうなんでしょうか?
「選挙に入ったら選挙のニュースが薄くなってない?」
そう感じる方はいらっしゃいませんか?
公示期間に入ると、選挙にまつわる報道は慎重さが求められます。
各候補者や政党ごとに公平に事実を伝えなければならないからです。
新聞なら文字数、放送なら時間を均等にすることが必要になります。
紙面は無限に増やすことが可能ですが、時間には限りがあります。
一つひとつの選挙区の一人ひとりの候補者に時間を割いていたら、
時間がとても足りません。小選挙区制になってその傾向は顕著です。
そうなると政党ごとの動向や議席数の予測に時間を割いたほうが、
結果的に“無難”ということになります。
その“無難さ”こそが問題ではないかと僕は考えます。
先ほども書きましたが、議席数予測は報道する側には助かります。
予測を基に番組の構成や話の組み立てを考えることができるからです。
仮に予測と異なったとしても、組み立て直せばいいだけの話です。
しかし有権者にはどれほどの役に立つのでしょうか。
議席数予測を見て投票行動を決めるのは、主体性の点で甚だ疑問です。
「誰に/どこに入れるか」だけでなく「投票に行くか行かないか」も含めて。
ならばいっそ、公示期間中は一切選挙報道をしないというのも手です。
情報は全て自分で入手し、自分の頭で考えて投票しろということですが、
流石に現実的ではありませんし、報道機関の役割放棄に等しいですよね。
最大の懸念は“投票日を忘れられる”ことかも知れません。
じゃあ伝える側に必要なことは何か。
「投票へ行く気にさせること」です。
今回の選挙の最大の関心事は投票率。
過去最低の前回衆院選を下回るか、哀しい予測が立てられています。
投票率が下がると組織票が強くなり下馬評どおりの結果に、
投票率が上がると浮動票が強くなり下馬評を覆すことがあります。
「『何も変わらない』と思う人こそ投票に行け」と言われるのはそこです。
まあそれはそうなんですが、
今回はちょっと違う視点で投票率を捉えてみたいのです。
投票率は確かに国民の政治への関心のバロメーターですが、
果たしてそれだけでしょうか。
国民の受身率
メディアへの関心率
この二つをも表しているような気がしてなりません。
「政治不信はあるけどどうせ何も変わらないし」
投票所へ行くのが億劫になる理由はたいていこれ。
「変えよう」と思うから「変わらない=つまらない」と思うのであって、
「変えたい」「変えたくない」に関わらず投票して意思を示せばいいのです。
早く結果を求めようとするから結果が出ないと失望し、
変えられない自分に失望するのではないでしょうか。
受身になればなるほど安易で劇的な変化を求め、
やがてそれにすら飽きてゆくのではないでしょうか。
即効性を求めることに慣れた我々が陥りがちなことです。
そもそも自分自身ってそんなに変わりやすいものでしょうか。
選挙で大切なのは変えることではありません。
自分の意見を代弁してくれる人を選ぶこと。
なんとなく選ばれた人ではなんとなくしか意見を言えません。
投票率は政治家にとっても「見られている」意識を映す鏡です。
もうひとつ、“メディアへの関心率”。
候補者や政党に関する情報を等しく提供し、有権者に判断材料を提供する。
これが選挙におけるメディアの本来の役割です。
しかし現実は予測や憶測、当確を打つ早さを競うことに終始しています。
食いつきはいいかもしれませんが飽きられるのも早いもの。
結果的に有権者から判断する力を奪っているのではないでしょうか。
関心を高めることと歓心を引くことがごっちゃになってしまっては、
政治の現場の声を伝えるメディアへの信頼は地に墜ちてしまいます。
投票率は、こうしたメディアへの信頼度を表す数字でもあるといえるでしょう。
去年の参議院選挙から、候補者や政党がインターネットを使って
政策や生の声を届けることができるようになりました。
有権者が自発的に情報を得る選択肢が増えたことにもなります。
既存メディアにとってはかなり存在感のあるライバルです。
しかしインターネットは青天井。
情報量も無限なら人々のアクセスも無限です。
玉石混交からいかに精度の高い情報を抽出できるか。
国民一人ひとりの情報精度を高めることが求められます。
もはや受身ではいられないということです。
国民一人ひとりの情報精度を高める。
メディアが目指してゆくべきはここではないでしょうか。
「投票へ行く気にさせること」はつまりこういうことなのです。
今回公示期間中に自分の意見を話す時間は一秒もありません。
今書いたような役割は一つも果たすことができませんが、
その分じっくり考えて投票と開票特番に臨みます。
■衆議院選挙開票特番
12月14日(日) 24:00-25:00